大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和31年(ヨ)4022号 決定

申請人 小糸製作所

被申請人 全国金属労働組合東京地方本部小糸製作所品川支部

主文

被申請人は申請人会社の製品其他営業用諸物件の搬出、搬入並に営業用の製品原料資材其他物件の搬出搬入の妨害をしてはならない。

(注、無保証)

(裁判官 西川美数 岩村弘雄 三好達)

【参考資料】

仮処分命令申請

申請人 株式会社 小糸製作所

被申請人 全国金属労働組合東京地方本部小糸製作所品川支部

申請の趣旨

一、被申請人は申請人会社の製品、其他営業用諸物件の搬出、搬入並に営業用の製品資材、原料其他物件の搬出、搬入の妨害をしてはならない。

二、被申請人は申請人会社に出入する営業関係、業務関係又は会社従業員其他顧客に対し会社への出入を妨げてはならない。

申請の理由

一、申請人は資本金一億五千万円、肩書地に本店、同都品川区東品川四丁目三九番地に本社倉庫を有し、各種車輌、信号保安装置及び各部品の製造並に販売等を営む会社であり、被申請人は申請人会社の従業員を以て組織され男二二八名女三四名、組合員総数二六二名を擁し全日本金属労働組合に所属する組合であつて醍醐利郎はその執行委員長である。

二、被申請人組合所属組合員の平均年令は三三年勤続平均八、一年その給与平均は男一五、八六一円女八、二六一円男女の総平均は一四、八七五円であつたところ昭和三十一年二月下旬組合側は賃上要求の討議を開始し之に対し会社側は、基本給五%(平均五〇〇円)増額の案を提示した組合側は之を不満として同年三月七日臨時大会を開催し、一律三〇%(一人平均二五〇〇円)増額要求案を決定し直ちに申請人会社に対しその旨回答期限を同月十日と附して通告して来た、申請人会社は之に対し前記会社案を補足説明することによつて回答に代えたき旨返答し爾来同年三月一三日より同年二六日に至る間前後五回に亘つて団体交渉を重ねて来たが二六日遂に右団交は決裂した。

三、右組合側の要求案は申請人会社の経理の実体よりみて到底実現困難なものであるので申請人は団交の間会社計理の諸資料を組合側に提示説明をなし誠意を以て交渉解決に努力を尽して来たが、被申請人組合は専ら会社資料の措信し難いことを主張し自己の一方的見解に固執して譲らず加えて三月二六日には一、停年制を六十歳(従来は才)に引上げよ 一、臨時工を本採用とせよ 等の二項目を追加要求し来り、申請人会社の企業の実態を無視した態度に出て来たのである。

団交決裂するや被申請人組合は直ちにストラキ宣言を為して部分ストに突入した。

四、一方申請人会社は各種業者、顧客間との取引契約に基き一日も業務をゆるがせに出来ないのでその業態を平常通り維持せしむべき手段を尽して作業の続行に努めて来たが被申請人組合はスト宣言をなすや間もなく傘下組合員百七、八十名位を大挙動員し会社正門附近に蟠居してピケを張り闘争委員長醍醐利郎の名を以て指令、第三〇号を発し紛議中は組合も物品の盜難、破損等に責を追う場合ありとの理由を設けて、会社物品の正門搬出入に圧力を加えて来たがその後愈々態度を強化し来り最近では正門内にテントを張つて頑張り門の一方を閉し門前には丸太を放置して自動車の運行を阻害する等実力を以て会社側の業務遂行を妨害する行為に出て来た。

五、申請人会社は、之に対し同年四月六日、文書を以て、被申請人組合に申入をなし「物品の社外持出につき闘争委員会の許可を要すとの指令は社内物品の所有権が会社に属する以上承服出来難い措置であつて、会社物品の搬出入、車馬の出入門を実力を以て阻止するのは行き過ぎた違法行為であつて、之に因る損害は凡て組合側に責あるべき」旨抗議し且同日同様文書を以て、前記正門内のテント張り丸太の放置等は明らかな会社業務の妨害であるから之等を撤去すべき旨の要求申入を行つた。被申請人組合の実力による業務妨害は眼に余る物があり同年三月三十一日には、本社倉庫所属のトラックが日本車輌本店並びに自衞隊浜松飛行隊向の商品、室内螢光灯十箇室内自然灯二十四箇進入角灯二箇等を積送し来つた際多数組合員の実力による入門阻止に遇つたので森工場長は直ちに業務命令を発してその搬入方を命じたが組合側は之を無視し事もあろうに同トラック積載商品を搬去し何れへか持ち去つてしまつた。

こと茲に到つては、被申請人組合は所業は明らかに正当な争議行為の範囲を逸し法と秩序を無視し明らかな故意を以つてする会社業務の妨害行為であつて、会社は之により多大の損害を被りつつあるなお申請人被申請人間は現在無協約である。

六、敍上被申請人組合の労働争議に名を藉りた明白な不法行為により申請人会社は当然の営業行為を妨害され、且之に因つて回復し難い損害を被つているのでその排除並びに賠償請求の本訴を提起すべく準備中であるが事態右の如く急迫しており今にしてその請求権を保全しておかなければ仮令右本案に勝訴判決を得たとしても有名無実の空権に帰する虞大であるよつて御下命の保証を立て申請の趣旨記載の如き仮処分を求むるため本申請に及んだ次第である。

疏明方法(省略)

昭和三十一年四月四日

右申請人代理人 酒巻弥三郎 外二名

東京地方裁判所 御中

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例